分子疫学研究室

大学院生募集

大学院生を募集しています。詳しくは下記をみてください。

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臨床研究とは、より効率的に病気を診断あるいは予後予測する、より効果的に治療する、病因をつきとめる、病態を理解する、病気の発生を予防する、ことを目的に臨床の場より疫学的手法を用いてエビデンスを構築する学問です。学祖高木兼寛は、ビタミンが発見される前に臨床研究から得た知見を基に、脚気を予防し、多くの人々を救ったのは周知の事実であります。我々の研究室は、古典的および現代の疫学、生物統計学の手法を駆使し、患者さんのデータから真実を発見し、これを患者診療、地域医療、社会に役立てることをめざしています。そのミッションの中で、臨床研究を科学的に実践できる人材を育成することは大きな柱の一つと考えています。

臨床研究はあくまで手法です。大学院生には、持参の臨床研究テーマをとおして、その手法を応用自在に使えるようになってもらいます。具体的な臨床仮説を携えてもらい、その仮説を検証する過程を我々スタッフが支援する形をとります。よって、研究内容は多岐にわたります。単に学位論文を仕上げるだけでなく、大学院卒業後においても、臨床をマクロの視点で深く洞察できる実力をともなった人材を育成することが目的です。コンピュータソフトとして、SAS、STATA、Spotfire(genomics 用)、Clementine(NeuralNet、Recursive Partitioning)、SPSS を配備し、オリジナルの帳票を読み込むためのOCR、大学院生用のデスクもあります。週1 回以上の討論会により、臨床研究のロジックを自分のものとしてもらいます。


現在の主な研究
  • 臍帯血研究
  • 双胎研究
  • 癌のゲノム科学
  • 慢性疾患のゲノム科学
  • 総合診療部としての臨床研究
  • 国家安全保障:災害時の1次、2次、3次予防
  • 感染症数理モデル
共同研究
  • 多数

一般目標

臨床上の仮説設定に対して深く考え、論理的結論に達する能力を養う。その際、以下の能力も必然的に身に付けなくてはならない。

Problem-solving skills
教科書には回答のない命題を与えることにより、独自で問題を解決する手段を考えさせる。
Brainstorming skills
小グループで自分の考えを主張し、また他者の考えを傾聴する経験をさせる。特に、対立・批判ではなく、お互いの意見に触発されて新しい考えへと発展できる体験をさせる。
Critical thinking skills.
論理的思考により、ある論述に対する矛盾点を指摘できる能力を養う。
Metacognitive abilities.
時間的制約を設けることにより、効率的な仕事配分を考えさせる。

行動目標

  • 臨床上の疑問を仮説として置き換え、臨床研究のデザインをすることができる。
  • 臨床研究のプロトコールを作成できる。倫理委員会提出書類を作成できる。
  • 臨床研究のモニターを経験する。
  • データを統計解析し、結果を表現できる。
  • 結果を他の論文を合わせて論理的に考察できる。
  • 論文を投稿し、査読者と議論できる。
  • 聞き手にとって理解しやすいプレゼンテーションを行うことができる

毎週行う勉強会の風景

勉強会の写真

1年目は生物統計、疫学の教科書をよむことからはじめます。そのため、この分野の知識が全く無くても心配する必要はありません。

既に欧文論文として受理された慈恵病院の臨床生データをわたし、統計ソフトを用いて図表を作成させ、発表させます。これによりかなりの実力を養うことができます。

臨床生データ

統計ソフトはSTATAを使います。大学院生1人1台のPCを割り当て、全てのPCにはこのSTATAが入っています。

STATA

夜間の疫学・統計学のセミナーにも積極的に参加してもらいます。2年間このような生活をしてもらうだけでも、海外で公衆衛生修士(Master of Public Health: MPH)を取得した人と同等の実力をつけることができます。

明治薬科大学修士の学生さんの1週間の予定をみてみましょう。プロジェクト内容によって生活リズムは色々ですが、「よく学び、よく遊べ」をモットーに学生の特権を活かして充実した時間を過ごしてもらうようにしています。

1週間の予定

また、常になごやかな雰囲気なのも我々の教室の特徴です。


H先生の誕生日の一コマ

誕生日の一コマ 写真

医学部卒業で医学博士取得を目指す方へ

分子疫学研究室は講座ではないため、直接大学院生を受けることはできません。しかし、慈恵医大内の他講座に籍を形式的に置くことにより分子疫学研究室として大学院生を実質的に受けることができるようになります。直接御相談ください。

過去4名の大学院生を受けました。

S先生(小児科):
下記2つの論文を仕上げました。そして、それを履歴書に書き、強い推薦状を添えてアプライしたところHarvard School of Public Health MPH に見事合格しました。そのため、現在はアメリカです。
日本のベロ毒素産生性大腸菌による出血性腸炎の実態、そしてその発生率が気象条件だけでなく牛の飼育数など社会経済因子によっても影響を受けることを報告しました。
Verocytotoxin-producing Escherichia coli, Japan, 1999-2004.
Emerg Infect Dis. 2006 Feb; 12(2): 323-5.
参照URL
小児が熱性疾患に罹患している最中、IDO活性が亢進していることが判りました。
Activation of Indoleamine 2,3-Dioxygenase in Children with Acute Febrile Diseases.
JMAJ. 2005; 48(6): 277-82.
参照PDFへ
H先生(総合診療部):
現在最終年です。
H先生(耳鼻科):
耳鼻科領域の腫瘍のEGFRの遺伝子変異と薬剤感受性の関係をみています。
S先生(内科):
2007年にエモリー大学公衆衛生大学院でMPHを取得し、我々の教室に大学院生としてきてくれました。テーマは感染症疫学です。

既に修士をお持ちで医学博士取得を目指す方へ

医学部が6年生という性格と、慈恵医大大学院のシステムから、一般大学卒業後修士を取得してください。そうすると、4+2年=6年となるので教育年数が医学部と並びます。そうすれば、我々の部署に入ることも可能となります。薬学だけではなく、統計学、コンピュータサイエンス、逆に行動科学や国際保健に興味のある学生さんも大歓迎です。研究内容は、本人の希望に沿って決めていきます。興味のある方は一度御相談ください。


明治薬科大学学生

現時点では、明治薬科大学客員教授という立場ですので、明治薬科大学の学生さんだけは、修士としてお受けすることができます。ただし、これは明治薬科大学の派遣先という考え方です。実際、5人の修士学生を受け、来年度からも3人がくる予定です。今のところ就職率100%です。面接のときも、疫学・統計学を勉強しているというと、好印象を与えるようです。


個別テーマと就職先
Kくん:
臍帯血重金属濃度(妊娠中の生活との関係)大鵬薬品 臨床開発職
Hくん:
肺がん鏡視下手術(生存解析)総合メディカル 薬剤師
Fさん:
気温と血圧の関係(10万人以上のデータ)参天製薬 臨床開発職
Yくん:
ふたご研究(300人のデータ解析:性格の遺伝性を定量化)
緑内障多施設共同研究、肝炎研究のデータモニター
佐藤製薬 研究・開発部(内定)
Sくん:
臍帯血重金属濃度(小児成長発達との関係)

学生さんと一緒に勉強できるのを楽しみにしています。
わからない点があれば気軽に御相談ください。