分子疫学研究室

過去のセミナー

【平成19年度】 疫学デザインコース(6回)

目的
臨床研究のデザインができる人材を育成する
日時
終了しました
場所
東京慈恵会医科大学 大学1号館 4階講堂
費用
12,000円(大学生・大学院生は6,000円)
講師
浦島 充佳(東京慈恵会医科大学 臨床研究開発室)
方法
講義、統計ソフト(STATA)、論文の吟味
説明
指定図書: 
@How to make クリニカルエビデンス (医学書院) 浦島 充佳 著
AHow to use クリニカルエビデンス (医学書院) 浦島 充佳 著

なるべくセミナースタートまでに読んでおいて下さい

詳細

1. 2007年06月01日
19:00〜22:00
@ 序論
 高木兼寛の脚気栄養学説を例に疫学研究の重要性について概説します(ビデオ供覧)。

A STATAの使い方
 その後、備え付けのコンピュータを起動し、STATA(統計ソフト)の使い方からはじめます。
2. 2007年06月08日
19:00〜22:00
@ バイアス、交絡、偶然
 ある因子がある結果に関連することを議論するのに、バイアス、交絡、偶然の影響を否定できてはじめて結論できます。疫学の概念からはじまり、バイアス、交絡、偶然にはどのようなものがあるか、それぞれをどのように扱うべきかについてまで解説します。

A 臨床研究デザイン、リスクの指標
 後半、臨床研究のデザイン、特にケース・コントロール研究、コホート研究、ランダム化臨床試験の概要を示すとともに、リスク比、リスク差、オッズ比について説明します。授業の合間で、STATAを使いながら参加者にリスク比、リスク差、オッズ比を計算してもらいます。
3. 2007年06月15日
19:00〜22:00
@ 統計学の目的、推論と検定
 バイアスは、研究デザインを工夫することによって除去されます。交絡は、統計手法により補正することができます。そして、例えば2群間に差を検出したとき、偶然なのか、それとも本当に違うのか、これも統計を使って対処します。
 最初に2項分布と95%信頼区間についても重点的に解説します。次に、正規分布について話します。そして、「どのようなときにどの検定を使うのか?」、最もよく受ける質問ですが、これについても概説します。しかし、検定の詳細な原理には触れません。
 理論について講義したあとは、2万人以上の健康診断のデータを使って、どのような生活習慣がメタボリック症候群と関係するかについて、参加者とともにSTATAを使って検討していきたいと思います。例えば、メタボリック症候群にならないようにするには毎日朝食をとるとよいのか?意識して運動をした方がよいのか。。。などなどです。その際、分布、平均、分散、t 検定などについても寄り道したいと思います。何故なら、先ずは理論よりも実際のデータを使って統計学の面白さを皆さんに実感していただきたいからです。
4. 2007年06月22日
19:00〜21:00
@ ランダム化比較試験
 ランダム化比較試験(RCT)は基本的にphase IIB, III で用いられるデザインですが、市販後に行われる場合もあり、また市販後の研究デザインを理解する上での基本となり得るため、研究デザインの最初に取り上げることにしました。
 この講義に参加する前に、2つの論文を読み、設問に回答してきてください。簡単なランダム化臨床試験の解説講義は行いますが、予習してこないと、せっかく参加しても内容を十分理解できないと思うからです。
 最初の論文はオランダの開業医のグループが行った典型的RCTで、「抗生剤が中耳炎を減らすか?」というシンプルな話です。ランダム化していてもどのようなときにバイアスが混入するかを理解する上で好例と考え採用しました。日本語の解説を添付しておりませんが、指定図書:How to use クリニカルエビデンスに解説されているので、そちらを参照ください。2番目のビタミンAでは、ビタミンA長期投与が肺がん発症を予防するかという疑問に応えようとしたものです。しかし、結果はむしろ肺がん発症が多くなって途中で試験を打ち切ったものです。
5. 2007年06月29日
19:00〜21:00
@コホート研究
 コホート研究は観察研究の代表です。ここでは、前回同様2編の論文を予習してきていただき、これについて検討していきます。 薬用量が変化するようなときに、どのように結果との関係を評価しますか?例えば、心房細動のある患者さんでは、心臓内に血栓を形成するため、脳梗塞などの梗塞性疾患を合併することが問題となります。そこで、臨床現場ではワーファリンを処方して血栓形成を減らすようにします。ただ、過剰に投与すると逆に出血しやすくなってしまいます。また、同じ薬量でも患者さんによっては効果が異なります。そこで、INRを指標として、適正な薬物使用を決めた論文です。
 施設によって、治療法が大きく異なる場合、そして、どちらが優れているかについてのエビデンスが無い場合どうしますか?2番目の論文は、動脈管開存症に対して開胸手術かカテーテル治療かを比較したものです。本来RCTを行うべきでしょうが、どちらの治療を行うかは施設により大きく偏っており、しかも臨床現場で既に実践されているとすると、今更RCTを行うわけにはいきません。たぶん、このような状況は市販後にも多いのではないかと思います。また、外科的治療においてもしばしばあることなのではないでしょうか?施設間の臨床レベルの偏りをどのように克服しようとしたかが見ものです。
6. 2007年07月06日
19:00〜21:00
@ ネステッド・ケース・コントロール研究
 nested case control study は市販後調査でも重要なデザインの1つです。母乳栄養が肺炎を予防するか?という小児科領域では教科書にも書いてありそうな内容です。しかし、コホートを明確にし、そのリスクを定量化した点で本研究の価値があると思います。

A ケース・クロスオーバー研究
 今まではケースとコントロールなど異なったグループとで対比していました。ケース・クロスオーバー研究では、同じ人の中で、暴露された場合とそうでない場合で結果発生に影響があるかどうかを比較しています。発作などをみる場合には都合がよいかもしれません。