過去のセミナー
【平成23年度】疫学コース(全5回)
- 目的
- ◆今年の特徴
本コースも今年で11年目を迎えました。今までの「疫学コース」を前半(5月〜6月)5回とし、感染症疫学を膨らませて「グローバルヘルスコース」に改め、後半(9月〜10月)5回としました。
◆目 的
「疫学コース」:臨床研究をデザインし、解析できる人材を育成する。
「グローバルヘルスコース」: グローバルヘルス分野の中でも感染症に重点を置いて解説、演習、討論を行う。 - 日時
- 「疫学コース」全5回
2011年5月13日(金)〜2011年6月10日(金)
全て19:00〜21:00 - 場所
- 東京慈恵会医科大学
http://www.jikei.ac.jp/univ/access.html
大学1号館 4階講堂
http://www.jikei.ac.jp/univ/access_s.html - 費用
- 「疫学コース」全5回
20,000円
(大学生・大学院生は10,000円)
(慈恵医大医学部学生・大学院生は無料) - 講師
- 浦島 充佳
(東京慈恵会医科大学 分子疫学研究室/[旧 臨床研究開発室]) - 対象
- 「疫学コース」
医療関係者、CRO、 製薬会社、医学・薬学系大学院生、保健所職員 - 説明
- 使用統計ソフト: STATA http://www.stata.com/
※講堂備え付けのラップトップPCにはSTATAが導入されていますので、購入する必要はありません。しかし、講義を受講しただけですと、やがてSTATAの使い方を忘れてしまいます。そのため、少々値段がはりますが、My STATAを購入されることをお薦めします。この講義で触れる機能はSTATAの極一部であり、逆にこれ1つを使いこなせれば大概のことはできます。
★なるべくセミナースタートまでに読んでおいて下さい
【指定図書】
@ How to make クリニカルエビデンス(医学書院) 浦島 充佳 著
http://item.rakuten.co.jp/book/1674875/
A How to use クリニカルエビデンス(医学書院) 浦島 充佳 著
http://item.rakuten.co.jp/book/1694824/
★余力のある人は是非読んでみてください
【推薦図書】
B Epidemiology in Medicine, Charles H. Hennekens, Julie E. Buring, Sherry L. Mayrent. Little Brown and Company, Boston/Toronto
http://www.amazon.co.jp/Epidemiology-Medicine-Charles-H-Hennekens/dp/0316356360/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=english-books&qid=1237791047&sr=8-1
お申込み方法 → オンラインより、お申し込み下さい
詳細
- Introduction
2011年5月13日
19:00〜21:00 - @序論
患者さん1人1人をていねいに診ることも大切ですが、疫学を使って、ある予防あるいは治療が大勢の人々にとって有効なのか否かを判断することも極めて重要です。そこで序論としては、ビタミンが発見される前に疫学研究を用いて栄養の偏りが脚気発症につながることを証明した、慈恵医大学祖・高木兼寛の話をいたします。そして、『私たちは何のために臨床研究を行うのか?』という臨床研究の原点について論じます。
A疫学の基礎
1)交絡・偶然・バイアス:ある因子がある結果に関連することを議論するのに、「バイアス・交絡・偶然」の影響を否定できてはじめて結論できます。疫学の概念からはじまり、「バイアス・交絡・偶然」にはどのようなものがあるか、それぞれをどのように扱うべきかについてまで解説します。
2)疾患頻度の数え方:後半、臨床研究のデザイン、特に「ケース・コントロール研究」、「コホート研究」、「ランダム化臨床試験」の概要を示すとともに、「リスク比・リスク差・オッズ比・95%信頼区間・標準化」について説明します。内容が盛りだくさんです。初心者の方は指定図書で予習しておいてください。
3)カイ二乗検定とオッズ比についてスライドを使いながら、時々STATAを使いながら解説します。 - Controlled and uncontrolled clinical trial
2011年5月20日
19:00〜21:00 - @2項分布と95%信頼区間の考え方
Aブリストル王立小児病院
ブリストル王立小児病院では、心臓手術後の死亡率が高いのではないかと指摘を受けました。これが本当であるかどうか疫学的手法で検証していきたいと思います。
B臨床試験
まずはphase III に用いられるランダム化比較試験について概説し、phase I、Phase II についても説明いたします。そして、臨床現場で時々行われるヒストリカルコントロール試験について、実際のデータに基づいてSTATAで解析します。 -
2011年5月27日
19:00〜21:00 - @ランダム化比較臨床試験のプロトコル作成
「ビタミンDサプリメント(ステイタスD3Ⓡ)内服による小中学生を対象とした小児科外来におけるインフルエンザ発症予防のための多施設共同二重盲検ランダム化プラセボ比較試験」という具体例を交えながら解説します。
Aランダム化比較臨床試験の統計解析
ランダム化比較臨床試験のハイライトです。通常の解析に加えて、subgroup 解析の考え方、baseline characteristics で偏りを生じた際の補正の仕方、交絡や相互作用について、多施設共同研究で施設間差の検証、repeated measure、欠損値の扱い方などを具体的データを用いながらSTATAで解析します。
B卵巣癌ビタミンD遺伝子多型と予後
ビタミンD遺伝子多型と予後について調査したところ興味深い結果を得ました。STATAで検証してみましょう。 - Cohort study
2011年6月3日
19:00〜21:00 - @患者さんの状態によって、投薬したり休薬したり、あるいは薬用量を調整したりすることがあります。すなわち、Exposure の因子が変化する場合には、どのように解析したらよいのでしょうか?このような場合、Exposure の程度に応じてperson-time を利用して解析します。最初にNSAIDs服用と胃腸障害による入院との関係をみてみましょう。
A診断学に関する研究(講義+演習)
まずダウン症スクリーニング、虫垂炎の診断を例にとり、ベイズ理論を簡単に説明します。そして、拡大内視鏡所見だけで腸上皮過成(病理組織診断)をどの程度診断できるかをみてみましょう。
新しい検査方法が確立され、その有用性をみる場合、sensitivity, specificity, positive predictive value, negative predictive value をみて、ROCカーブを描き、AUCを求めます。
Bプロペンシティ・スコアを用いた解析
ランダム化比較試験は、交絡を除去できる最も有効な手立てです。ところが、一端市場にでてしまった後では、今更その薬剤あるいは治療法についてランダム化比較することは極めて困難です。
そこで、1990年代後半頃から、最初にある治療が選択される確率をプロペンシティ・スコアとして計算し、次にこのスコアによりマッチングさせて比較する手法が考案されました。マッチングはcase-control study に用いられてきましたが、このプロペンシティ・スコアとはcohort study のマッチング手法と言えるかもしれません。
セミナーの最後の演題として、このpropensity scoreの適応と具体的方法に関して帝王切開を例に提示したいと思います。また最近のトレンドについても紹介します。 - Case-control study
2011年6月10日
19:00〜21:00 - @乳児突然死症候群
最初に乳児突然死症候群(SIDS)の発生が妊娠中の因子と関係ないかどうか検討してみましょう。データは、1人の患者さんに対して1人の同年齢正常乳児を母親の年齢でマッチングしてあります。例えば母親が14歳であれば、乳児突然死症候群(SIDS)でない正常体重児を出産した14歳の母親をコントロールとして1人選びました。このようなマッチングデータはconditional logistic regression で解析します。最初の何例かを示すと以下のようになります。検討する因子として母親の喫煙、うつぶせ寝の有無、上気道感染の有無、保温過剰、出生時体重を選択しました。
A飲酒と乳癌
臨床研究においては、再発の有無、病気発症の有無、反応性の有無など結果を0or1で示すことが多い。このような場合、「ロジスティック解析」がしばしば用いられます。原理について簡単に説明したあと、実際の臨床データに触れていただきます。
あなたは乳癌2,107人、コントロール2,020人、合計4,127のデータの解析を依頼されました。人数が多いので、諸々の因子についても同時に解析できそうです。しかも、飲酒と乳癌の関係については白黒はっきりしておらず、これが明確になれば大きなインパクトがあることは間違いありません。早速、「ロジスティック解析」を用いて飲酒と乳癌の関連について調査してみましょう。