分子疫学研究室

過去のセミナー

グローバルヘルスコース(全5回)

目的
◆今年の特徴
本コースも今年で11年目を迎えました。今までの「疫学コース」を前半(5月〜6月)5回とし、感染症疫学を膨らませて「グローバルヘルスコース」に改め、後半(9月〜10月)5回としました。

◆目 的
「疫学コース」:臨床研究をデザインし、解析できる人材を育成する。
「グローバルヘルスコース」: グローバルヘルス分野の中でも感染症に重点を置いて解説、演習、討論を行う。
日時
「グローバルヘルスコース」(全5回)
2011年9月9日(金)〜2011年10月14日(金)
全て19:00〜21:00
場所
東京慈恵会医科大学
http://www.jikei.ac.jp/univ/access.html
大学1号館 4階講堂
http://www.jikei.ac.jp/univ/access_s.html
費用
「グローバルヘルスコース」(全5回)
公務員、医療・保健関係者、学生、非コンサルティング民間企業(メディア、製薬企業等):無料
コンサルティング企業:50,000円
講師
浦島 充佳
(東京慈恵会医科大学 分子疫学研究室/[旧 臨床研究開発室])
対象
「グローバルヘルスコース」
危機管理関係者(企業、政府、地方自治体)、メディア、医療関係者、保健所職員
説明
お申込み方法 → オンラインより、お申し込み下さい

詳細

序論 2011年9月9日
19:00〜21:00
@なぜこのコースをはじめたのか?
グローバルヘルスの過去、現在、未来

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(以下Wikipediaからの抜粋)
1978年、カザフスタンのアルマ・アタ(現アルマティ)で開催されたWHO、UNICEFの合同会議で、その後の保健医療政策の基礎となる歴史的な宣言「アルマ・アタ宣言(Alma Ata Declaration)」が決議された。この会議で、当時のWHO事務局長マーラー博士は次のように演説を行った。『世界の健康資源の多くは少数の限られた人々へのサービスと、それに必要な医学、医療の研究開発に向けられており、大多数はこの恩恵の外で日々様々な病気で苦しんでいる。・・・世界には基本的ヘルスケアサービスすら受けられない人々が数十億人おり、保健医療はこれらの人々が健康を改善し、生産的な生活を送れるようにすることを第一に追求しなければならない。』

その後1990年代に入ると、東西冷戦が終結し、世界には、ヒト、モノ、サービス、カネが国境を超えて往来するグローバリゼーションの波が一気に押し寄せた。新自由主義的なワシントン・コンセンサスに基づくグローバリゼーションの進行は、結果的に富の偏在を招き、国家間、国内の経済的格差の拡大を生み出した。途上国の保健医療人材が国外に流出する頭脳流出も大きな課題として取り沙汰されるようになり、SARSやH5N1亜型インフルエンザなどの新興・再興感染症が容易に国境を超えて広がるリスクが増大していた。また、気候変動により、旱魃や洪水が頻発したり、地球温暖化に伴う疾病構造の変化が起こりつつある。こうした国境の枠を超えた健康課題は、もはやこれまでの「国際保健」の枠組み、つまり「富んだ国が貧しい国を支援する」という構造では対応できないものになってきた。

2000年代に入り、こうした変化に対応しうる新たなパラダイムとして「グローバル・ヘルス(Global Health)」が提唱されるようになった。

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そこで我々は従来の効率的ヘルスケアシステムのグローバル化に、感染症対策、人災も含めた災害対策も新たに加えたグローバル・ヘルスを考えています。
今回のセミナーでは特に後者にフォーカスをあてたいと思います。


A感染症疫学
R0: reproductive number など、感染症数理モデルの基礎を解説。
感染症疫学 2011年9月16日
19:00〜21:00
@感染症疫学演習
2003年SARSパンデミックの際、何があったかを振り返ります。
実際香港でSARSの診断を受けた1,222人のデータを、EXCELを使って図にします。
図にすることによって何かがみえてくるはずです。
今回は、統計解析よりも感染症疫学においては、エピデミックカーブを描くことの重要性について実感してもらいたいと思います。前半はグループによるデータ解析。後半はグループ発表をしてもらいます。

Aピッグズ湾事件とキューバ危機:危機管理における意思決定
2つともケネディ大統領時代、キューバとの関係において起こった重大事例です。
前者は失敗、後者は成功であると一般的に考えられています。ほとんど同じ内閣なのに、何が違ったのか?危機発生時の意思決定について考え、その原理原則を模索します。
意思決定とリスク・コミュニケーション 2011年9月30日
19:00〜21:00
@福島原発事故におけるリスク・コミュニケーション
前回導きだした原理原則に基づき、福島原発事故の対応について考えます。

Aヘルス・ケア領域におけるイノベーション
“Innovator’s Prescription: A disruptive solution for health care” by Christensen CM を題材に技術革新によってヘルス・ケア領域にどのような新風を巻き起こすことができるかを考えます。
新しい医療の開発 2011年10月7日
19:00〜21:00
@イノベーション
グループあるいは個人による発表

Aヘルス・ケア哲学
市場原理主義、功利主義、コミュニタリアリズムについて解説します。
マイケル・サンデル教授の白熱教室にあったように、特に医療の分野においては背後にある哲学をもつことは極めて重要です。哲学に正解・不正解はないと思いますが、どのような考え方があるか、紹介したいと思います。グローバル化が進む中、自分の考えをしっかり持っていないと、他者はどの考えに基づいてそのような意見を述べているなど理解しえないと、ヘルス・ケア分野でのグローバル化に翻弄されてしまうと思うからです。
例えば「お金持ちは最高の医療を受けられ、お金がない人はまともな医療を受けられない」としたらどう思いますか?医療政策立案者が「医療費は限られているので、肝臓移植を保険診療からはずし、B型肝炎ワクチンを乳児に無償接種可能とする」と発表したとしたら、どう反応しますか?
何のための医療なのか? 2011年10月14日
19:00〜21:00
@市場原理主義、功利主義と医療
最終回は「データを読む」と題して、ワークショップを行います。
皆さんにはあるレーシングチームのオーナーになっていただき、レースに出場するか否かの意思決定をしてもらいます。そして、“私たちは何のために医療を行うのか?”という正解の無い問について討論してみたいと思います。